彩のラブソングにみる「男が作ったシナリオ」

2014年7月4日 カテゴリ: ゲーム, シナリオ, 彩のラブソング, ときメモ

最近久しぶりに『彩のラブソング』というエロゲ…おっと、、、ギャルゲ…おっとっと、、、恋愛シミュレー…、、、いや、恋愛アドベンチャーゲームを遊んで攻略動画も出したわけですが、この手のゲームにありがちな

このシナリオ、絶対に男が作っただろ…

とすぐに分かるシーンがやっぱり出てきて笑えます。

この手のゲームではそういう理不尽なシーンを楽しむのも醍醐味かと。

この彩のラブソングでは特に『美咲鈴音(みさき すずね)』という女の子が、シナリオ作成者らの犠牲になっている様が凄まじいです。

彼女が弄ばれて辱められて人格が壊されていく様を順を追ってみていくと笑え・・・泣けます。

鈴音はバンドの中では一年年下の『メンバー全員の妹』という立ち位置。ですが、盲目的にそう思っている、それ以外何も見えていないのは主人公だけで、主人公の知らないところで周囲の人間の気持ちが動いている状態です。

鈴音は「彩(いろどり)」というこのバンドに入った時から主人公に思いを寄せていた。すぐに付き合おうよとかそういう積極的なところはなく、好きな人のそばにいて役に立つことで相手が喜んでくれれば良い、という献身的な性格の女の子。

そんな時ふと主人公が「片桐さんがー!!」と話し出す。

この会話の本題は「手馴れたメソッドでサラサラと曲を作るのではなく、自分の気持ちが躍動したものに対して曲を作る。それが人まねじゃなくて自分が本当に作りたい曲の形だと気づいた。」それを説得の材料にして「だから、今から曲を作り直す」という事をバンドメンバーに伝えること。

だからそれを気づかせてくれた片桐彩子の名前を出す必要は微塵もない。バンドメンバーにそんなことは関係ない。しかも「海、行ったんだ!」と絶叫する意味不明さ。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

その直後の鈴音の表情がこちら。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

鈴音「えっ!?先輩いきなり何言ってるの!?マザーファッカー過ぎ!」

といった驚きでしょう。

いつも近くで先輩の事を思ってきた鈴音にとって、ここ数日のうちに出てきたよく知らない女に先輩が気を取られて、しかも二人で海に行ったなんて心臓が止まりそうなほどの衝撃だったでしょう。

更に日頃から、曲作りで悩んでいる主人公の力になりたいとアピールしてきたのに、自分は蚊帳の外…。

その後、「コンテスト間近でお前の都合だけで曲を変更できるかボケ!」などと反対にあいこの話題はひとまず落ち着く。その直後の主人公の一言。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

主人公「…鈴音ちゃん? どうかした?」

鈴音「え…? ううん、何でもありません。」

主人公「…そう。 (何か悩んでるみたいに見えたけど…気のせいかな…)」

と続き・・・・・

主人公「ああ…。俺片桐さんと一緒に帰るよ。」という選択肢が出てくる。ドイヒーです。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

それを受けてベースの巧実くんが言う。

巧実「片桐と?何だそれ?」

主人公「まあ…いいじゃないか。それじゃまた明日な。」

完全に「女とイチャイチャ俺カッケー自慢」になっていて、もうこのシーンの本題は何だったか分からなくなるほど。

巧実の「何だそれ?」が通常の感覚ですよ。(ちょっと違う意味合いも込めて言っているのですが)

---翌日---

主人公はまたバンドメンバーを説得にかかる。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

片桐は巧実のクラスメートというだけで、この「彩」というバンドとは無関係です。ただ、歌が上手いとあって、巧実が密かに片桐をボーカルに誘っていたということはありますが、この段階ではまだバンドの活動に関わってくるべき人間ではありません。

そのまま片桐の話に夢中になる主人公にいい加減ぶち切れてくる巧実くん。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

主人公「そんなこと関係ないだろ!」←お前が言う!?

巧実「関係あるから言ってんだよ! この際だから言わせてもらうけどな…」

巧実「お前、このバンドが大事なのか、片桐が大事なのかどっちなんだよ!はっきり言ってみろよ!」

主人公「何が言いたいんだか、わからないよ!」←お前が言う!?

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

巧実は、鈴音が主人公に想いを寄せているのを知っているので、鈴音の前で無神経に片桐の話を無理矢理ぶち込んでくる行為に腹を立てていたわけです。

更に、巧実は以前に鈴音に告白してふられている。常にとりまきの女の子がワラワラといるこのイケメン、実は献身的で一途で真面目で情に厚く努力家という性格。いい加減でチャラく見えて実は心身ともにイケメンでしたという超人キャラ。

その巧実の気遣いに気付いている鈴音がついに立つ。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

もう辛すぎてついにこの場から立ち去ってしまう。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

片思いの相手がある日突然よく分からない女に夢中になる。

一番近くにいた自分が、曲作りで悩んでいた主人公の力になれなかった。

もっと積極的に想いを伝えられている性格だったら。

思いつめたり自分を責めたり。

以前、自分に好きだと言ってくれた超人イケメンが、相変わらず自分を気遣ってバカな主人公を制止してくれている。

そのためにバンドが上手く回らなくなってしまっている。

鈴音ちゃん、なかなかにツライ立ち位置です…。

不意に登場した片桐彩子という女一人のために、いままで平穏で暖かかった境遇が一変してしまった衝撃はどれほどのものか。もうパニックでしょう。

そもそも鈴音が想いを素直に伝えられる、伝えようと行動する積極性のある性格であったなら、こんなことにはなっていないはずのシーン。

ということで、鈴音が一途で献身的、相手が笑っていてくれればそれ以上は望まない(本当はラブラブになれたらとは思っている)、困った時は相談してくださいと伝えるのが精一杯の勇気である、そういった性格であることが伺えます。

年下の女の子なんて、甘えやすい立場だから積極的にアプローチしやすいのが普通だと思いますが、そういうことすら出来ないほどの引っ込み思案な一面があるんですねぇ…。

ここまでは鈴音の性格とその行動に納得いきます。

ひとまずそれは置いておき、この直後の主人公。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

なんという鈍感力。

この混乱した状況で康司くんのお言葉。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

康司「巧実が言いたかったことは、鈴音ちゃんが言いたくて言えなかったことさ。」

康司「私の前で片桐さんの話をしないで。片桐さんじゃなくて、私を見て」

主人公「でも…鈴音ちゃんは、俺達みんなの妹で…。」

康司「そんな風に思ってるのはお前だけだよ。」

康司くんは全能の神。

さて、シナリオライターらによって完全に当て馬的な小道具としていいように弄ばれている鈴音ちゃん。

可愛そうなキャラだなぁーなんて思いつつも、特に違和感はなく見ていましたが、ここから先がどんどんおかしくなっていきます。

康司くんの解説で全ての状況を理解した主人公は、鈴音に話しに行くと…。

鈴音「どうして、私じゃダメなんですか…?」

鈴音「どうして、片桐さんじゃなきゃダメなんですか…?」

鈴音「ねえ先輩…どうして私じゃダメなんですか!?ねえ、どうして!?」

鈴音「私は妹なんかじゃない…妹なんかじゃ…。」

鈴音「片桐さんより私の方が…。」

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

鈴音「私の方がずっと先輩のこと好きなのに!」

と泣きながら迫るんですけど、鈴音の性格からすると「私は妹なんかじゃ…」まで伝えるのが精一杯の行動なんじゃないかと。

そこまで言えば分かるでしょ、もう言ってもどうにもならないと悟った諦めと、というところで言葉を呑んで沈黙の決着というのが自然な気がします。

というか、想い忍ばせるタイプの女の子は、こういう気持ちの爆発のさせ方はせずに自分の中で気持ちの整理をつけて次に進む方が自然に思えるので、ちょっとこのへんで鈴音の人物像に違和感を覚えます。

そしてこの直後に…

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

鈴音「「彩」になんか入るんじゃなかった!」

と言って主人公をぶん殴ります。

なぜ誠実に気持ちを伝えに来た主人公がぶん殴られなきゃならないのか…???

主人公が思わせぶりな態度を取り続けてきて、その挙句「お前は本命じゃないから」などと言ったならビンタされる展開も納得できますが、この場合、

鈴音が自分で勝手に惚れて、彩でやっていくと決心して、主人公についていくと決めて、、、、想いを伝える努力をしなかったにも関わらず、思い通りに相手を手に入れられなかったから暴行を加えるという…。

鈴音ちゃん、完全に病んでるってやつですよそれ…。

傷心の鈴音に「片桐さんと一緒に帰る」なんていう下衆な選択肢を用意するほどのシナリオライターなので、ここで

1.鈴音を警察へ連れて行く

2.鈴音を病院へ連れて行く

3.康司に解説してもらう

という三択があっても良さそうなもの。

ウラ鈴音が出てきたのか何なのか、多重人格としか思えないほどとにかく怖すぎる鈴音という人物像の崩壊。

こんなヤバイ鈴音ちゃんに勇気を振り絞って物申すなら、鈴音の敗因は欲しいものを手に入れるための努力をしなかったこと。陰ながら想うことは努力ではなく、言わなくても分かれよという乱暴で怠惰な行動にすぎないという側面に気付かなかったこと。最低限、「伝える努力」というものはしないとね、鈴音ちゃん…
…とか言ったら刺されそう…(;´Д`)

---翌日---

主人公ウッハウハ。

バンド崩壊に落ち込みつつも彩子とデートで元気ビンビン。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

---翌日---

鈴音はもうバンドには来ないと諦めつつもいつもの練習場所へ行ってみると…

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

機材がセッティングされており、ドラムの向こうからひょっこりひょうたん島よろしく顔を出す鈴音。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

驚いた主人公が

主人公「鈴音ちゃん…どうしてここに…。」

と言うと、

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

鈴音「どうしてもこうしても、いつもここで練習してるじゃないですか。」

と…。

平坦な物言いに背筋も凍るような思い。

青臭い青春ラブストーリーかと思いきや、氷の微笑のような戦慄ストーリーに展開するのか…?

鈴音の傷害事件から2日しか経ってないのに、もう気持ちの整理がついたのかという衝撃。

まさか、若干生気のない目と表情は、心が崩壊して病みの境地に至ってしまったのではないか…?

とすら思えるほど素早い心変わり。

この展開、シナリオライターが絶対に男だと思えてしまうありがちな展開です。

ふった女がそれでも自分に好意的でいてくれる、というあり得ない男の願望がよく表現されています。

そしてこの直後、この日、片桐彩子が留学のため高飛びすると聞かされた主人公。すぐに空港に行けば会えるかもしれないと伝えられるも、鈴音やバンドを気遣ってそれを拒否したシーン。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

可愛そうに鈴音ちゃん、傷心のはずなのにシナリオライターの性の欲望によって無理矢理狩り出されて、しかも主人公と恋敵の仲を気遣う立場にさせられて・゜・(つД`)・゜・

一途な鈴音ちゃんをこんなに辱めてはダメ…。


で、エンディング。

彩のラブソング - IRODORI NO LOVESONG

片桐彩子と美咲鈴音が仲良くバンド演奏している…。

この写真を見た瞬間、まだやるか!まだ弄ぶか!とコーヒー大噴射。大笑いしてしまいました。

これぞ「ザ・シナリオライターは男だろ」なシーン。

自分を取り合う女の子たちが、なんやかんやとこれからも自分に好意的でいてくれる、という超絶不自然な設定を普通にもってくるんですよね。

鈴音がシナリオライターに弄ばれすぎたせいで人格崩壊してマネキンにしか見えなくなって終わってしまいました。

もう意識ないでしょ鈴音ちゃん…・゜・(つД`)・゜・

ということで、結局のところ、可愛そうな鈴音ちゃん…ということで(意味合いがちょっと違うけど)。


で、スタッフロールを見ていたら、シナリオ関連の名前が清々しいまでの男所帯で大笑い\(^o^)/

シナリオパート

脚本原案/絵コンテ:井出安軌(Dessin Doll)

ストーリー脚本:岡村憲明

ゲーム脚本:吉冨賢介、岡村憲明、上野亮作

演出:岡村憲明、吉冨賢介

アシスタントディレクター:吉冨賢介

脚本・演出指導:井出安軌(Dessin Doll)


もう一つ見応えのあるストーリーを組み上げるには、男が喜ぶ展開を否定する感性の持ち主も必要ではないかと…。それがイコール女性とは限りませんが。

それによって「じらし」、「もどかしさ」、「いらだち」などが表現されて面白くなるんじゃないかなぁーなんて思います。

主人公、よくよく見ればアレもコレも欲しい物みんな手に入れて鈴音ちゃんまで何となくキープしている感じでウッハウハで終わってるじゃないですか。そこまで無双しない方がね。一番欲しい物を手に入れた喜びが薄れてしまいますから。


こんなシナリオライターら男性陣の欲望によって一人の女性が崩壊してしまうような一面もありますが、青春しているラブストーリーで手軽に楽しめるように出来ています。

片桐彩子役/川口雅代

美咲鈴音役/桑島法子



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