戦国無双4のレビュー

2014年4月21日 カテゴリ: ゲーム, レビュー, 戦国無双4
戦国無双4
戦国無双4

総評

2014年3月20日にコーエーテクモゲームスから発売されたPS3とPS Vita用ソフト、言わずと知れた無双シリーズ最新作。日本の戦国時代を舞台にした戦国無双4は、数ある無双シリーズの中でもけっこう面白い方です。

戦国無双シリーズ10周年を記念するこの作品、無双の中では「アタリ」です。

ゲームモードは3種類。

無双演武・・・ストーリーモードで、乱世の日本の有名な合戦を地方(≒有名武将)ごとに章(『武田の章』、『徳川の章』、『織田の章』、『近畿の章』、『四国の章』、『中国の章』、『九州の章』、『真田の章』、『天下統一の章』)としてまとめてあります。一つの章は殆どが4つか5つのステージからなっており、章毎に小さなエンディングが入り、特定の章をクリアすると他の章が解放され、そこで大きく天下統一、家康の太平(大坂の陣)までストーリーを追って遊べます。基本的に史実に沿っているので、合戦で勝利しても「負け戦」というストーリー展開になることもあります。

模擬演武・・・フリーモードで、ストーリーモードでクリアしたステージを任意のキャラで遊べるモードです。

流浪演武・・・自作のエディット武将で日本各地を一マスずつ進んで合戦に参加しながら、全国にいる武将と出遭って親密度を高めていって「武将列伝」という武将一覧表を完成させるゲームです。昔のプレステ無印やスマホゲーでありそうな単純な仕組みですが、中毒性があってけっこう面白いです。

流浪演武のフィールド画面
戦国無双4

全てのモードでオンラインで遊べる機能がついていますが、なかなかマッチングせず殆ど遊べません。詳細は以下「悪い点」にて。

これら3つのゲームモードとは別に、オリジナルの武将を作成できるエディット機能がついており、これがかなり細かいところまでエディットできるため、様々な容姿の武将を作成できます。これだけでも時間を忘れていじってしまうほど面白いです。ちなみにこんな武将を作りました。

無双シリーズは『ザ・大味』なゲームのため、アタリ作品といっても他と大きく面白みが変わるものではなくどれを買っても『大味』を楽しめます。長年に渡って制作のノウハウを蓄積確立しているシリーズ物であるにも関わらず他の無双同様に悪い所は相変わらず悪い、にもかかわらずのフルプライス、などということが気にならないのであれば、ワラワラした敵を一掃する爽快感を日本の戦国武将で味わえる本作品はおすすめです。

戦国無双4

戦国無双4


良い点

キャラクターの活かし方が上手い

ユニークなキャラクターたちを良い味に見せる演出の上手さ、こなれている感があって安定した面白さを作り出せています。

伊達政宗の心の叫びや、柳生宗矩のクールさ、甲斐姫の元気に頭弱そうな発言など。

井伊直虎なんて最初に見た時には「また懲りずにこういう変態臭いキャラだしてきてよくやるよな……」ぐらいに思いましたが、「は…はずかしぃ…」からの流れが面白く使われているところもあり楽しく見ていられます。

神速攻撃!!

これは地面を滑るように大きく速く移動しながら敵の群れを攻撃していくアクションです。

戦国無双4

他の無双にあった「馬無双」のような爽快感があります。

今作はこの神速攻撃で雑魚を攻撃し、武将は通常攻撃やチャージ攻撃で、といったところが基本的な遊び方になります。

武器の性能がランダム

一つの性能を強化することは出来ますが、性能を付け加えたり削ったりといった改造はできません。そのため、獲得した武器に付いている性能がしょぼいと、たとえ攻撃力を上げる性能が付いていてもゴミ武器になります。

このようにそのキャラクターにとって良い武器が出るかどうかは運次第なので、常にもっと良い理想の武器が出るかもしれないという楽しみがあります。

改造して意図的に最強武器を作れるというのも良いのですが、こういう仕様も良いと思います。

走りながら馬を呼んでそのまま飛び乗れる

これによってゲームのテンポが良くなっています。ただ、馬が来るのが少し遅い点と、近くに来ても壁際や細い道や曲がり角ではプレイヤーの位置まで来ないで壁にぶつかったりプレイヤーの周りをグルグル回っていたりして乗れないこともよくあるので、このあたりを素早く正確に乗れるように修正してもらいたいところです。

他の無双にあるように、馬に乗れずにジャンプしてしまい、その隙にフルボッコにされて死亡なんていうことが起きない点は非常に助かります。

素晴らしいエディット武将機能

オリジナルの武将を作れる本機能は非常に優秀です。場合によってはゲームをしている時よりも時間を忘れて夢中になってしまうこともあるほどです。

戦国無双4

戦国無双4

当サイトではこんな武将を作ってその作り方を公開しています。

BGMが豊富

BGMが沢山入っていて面白いです。70曲ぐらい。全体的に和楽器の音色とシンセサイザーの音色が合わさったアレンジで統一感を持たせています。ズンズンズンズンいいながら和風テイストを盛り込んだサウンドが好きな人には非常にはまるのではないかと。

ただ、聴いていて思ったのは、発音するタイミングが揃いすぎているのと、音の大きさ(音圧含む)や音符の一つ一つが揃いすぎているせいで”音楽”としてはチープさを感じる部分もありました。抑揚にとぼしく躍動感がないため無表情、無感情に感じられ、例えば尺八のような生楽器系の音を聴いていても演奏している姿が全く浮かんでこない(打ち込みだからという意味ではなく)のは少々寂しいところです。

「そこは若干ためてドーンと行くところ」で一定のテンポでチャキチャキ進んでしまっているところや、「抑揚をつけて表情豊かに演奏するフレーズ」で全ての音がはっきりと聞こえてまっ平らになっていたりといった部分が非常に多いです。

ただ、”音楽”としての表情の豊かさや抑揚をそのまま持ち込むと、”BGM”としてはNGをくらうこともあるため、このあたりは”ゲーム音楽”として受け入れて聴いた方がいいのかもしれません。

BGMは沢山入っていていいですよ。こんなに入ってるのはそうそうない。

武将の数が豊富

戦国無双4

操作できる武将の数は55人、その他名前が出ている武将が959人。それに加えてエディット武将が20人まで保存可能です。

「この武将まで出てるのかw」と驚ける部分も、このゲームの面白さの一つです。

カットシーンが豊富

無双演武(ストーリーモード)で120個、流浪演武で220個、エディット武将用のものが17個、総数357個ものカットシーンがあります。

シーンに合わせてモーションを作りこんでいるようなものではなくテンプレな動きだけの簡素なものですが、ユニークな武将たちのやりとりは一定の面白さがあります。

有料の特別衣装が変態的

「良い点」に書くものなのか迷いましたが、飛んでて良いのではないかということでこちらに記載。

バスローブ、SM、メイド、紐だらけ、(ほぼ)裸エプロン、ウェディングドレス、巻きバスタオルなどなど、およそ戦場には似つかわしくない衣装が PS Store にて発売されています。

興味のある方は買ってみるのも良いかと。

しかしなぜブーメランパンツにネクタイ姿がないのでしょう?

いつの日か、 DJ OZMA ばりの全裸スーツが発売されるのではないかと期待しています。

ちなみに裸エプロンは別の記事にて紹介しているのでご覧ください。

ねねの特別衣装、横乳が過ぎる(ほぼ)裸エプロン


悪い点

あたりまえの事が出来ていない

新しいアクションやグラフィクスを作り出していくのもいいですが、極々基本的なことが疎かになっていて、それらがプレイに支障をきたしています。

例えば、敵武将の出現とその武将に関わるミッションの発生がずれているため、

出現した敵武将Aを倒す

数秒~数分後に、ミッション発生。内容「武将Aを目標地点まで誘導して倒せ」

もうその武将は倒して居ないよ!で棒立ち・・・

ミッション失敗!


こんなことがよく起きます。

低中難易度であれば、目の前にいる敵武将を倒さずにミッション発生の可能性を考えて数十秒の間その周りを攻撃せずにウロウロして待機することは容易ですが、高難易度ともなるとそうもいきません。その数十秒の間に操作していないプレイヤーが瀕死や死亡に追い込まれたり、操作しているキャラでも攻撃せずにウロウロしているのは死活問題です。

また、他の無双でも同じですが、既に死亡した敵武将のセリフが後々になって流れてくるといったことも相変わらず。これでストーリーに没入するのはかなり無理があります。

ミッション発生時にゲームが強制的に一時停止してミッション内容が表示されますが、その時に馬に乗って走っていると復帰したと同時にその馬が止まってしまいます。一旦馬が止まってからまた走り出さないといけなく、移動している時の疾走感やゲームのテンポが非常に悪くなっています。

ミッションが発生する直前、1秒か2秒程度の間、敵の頭上に表示されている体力や名前がなぜか全て消えるため、目的の敵を見失いやすいです。表示は消えても敵は動いているので、タイミング悪く無双奥義なんかを発動して外してしまうこともしばしば起きます。

無双奥義を発動している最中、キャラの方向はLスティックで変えられるにもかかわらずカメラアングルは動かせないので、ただただプレイしづらい。敵は動いて画面外に行っても当てずっぽうにキャラの向きを変えて対処するしかありません。これは完全に不具合ではないかと・・・。

つまりは、プレイすれば「これおかしいよね」って誰でも分かる程度のことが放置されている状態です。

ミッション発生待ちでゲームテンポが悪くなる

上の『あたりまえの事が出来ていない』で書いたことが起こるため、フィールド上に敵武将がいても数十秒から1、2分は手を出さずに様子見をして進行を止めざるをえなくなります。

当然ゲームのテンポ感が悪くなるので、せっかくの神速攻撃による爽快感の演出も半減といったところです。

プレイヤーが操作できない時に敵が動く

無双極意を発動した直後、わずかな間ですが敵が動きます。

無双極意を発動した時は当然敵は同じ場所にいると思っているのでそのまま立て続けに奥義を発動しますが、いざ発動したと同時に敵武将がいないことに気づいて後の祭り。

そして下記のカメラアングル問題とのコンボで悩まされます。

カメラアングルの強制移動で方向と敵を見失いやすい

無双奥義や無双奥義・皆伝を発動するとキャラクターごとに特有のカメラアングルの動きをします。それはそれで見せる演出として構わないのですが、そのせいで方向や敵を見失うといったことが頻発します。

そのため、せっかく奥義を発動しても方向や敵を見失ってまったく見当違いの方向へ技を放ってしまいゲンナリすることも。

また、奥義を放った直後、通常のプレイに戻る時に方向と敵を見失っているのでそれを確認するために一瞬動きを止めて確認という作業がつきまといます。

低中難易度では面倒というだけで済みますが、最高難易度の「地獄」ではその一瞬の隙に瀕死に追い込まれたり瞬殺されてしまうこともあるため、早急に修正してもらいたいところです。

救援要請している味方がどこに居るか分かりにくい(マップが見にくい)

「助けてくれ~!」と危機に陥った味方が声を上げるのですが、その味方武将がどこにいるのか分かりにくいです。マップの点が敵味方入り乱れて重なって全く見えないという状態にもなります。

ちなみに、自分のすぐ近くにいる敵武将も、マップ上ではプレイヤー自信のマークで隠れてしまって見つけられません。すぐ後ろに敵武将がいるなんていうことも……。

未熟な仕様で敵を見失いやすい

操作がきかない一瞬の隙や表示が消えて目くらまし状態になった隙に敵武将が動いて見失うということがまま起きます。

容姿が露骨に違う武将ならまだフォローもしやすいのですが、一般兵と大して変わらない容姿の武将だと見つけにくく、カメラをグリグリまわさなければいけなくなるだけでなく、その隙に大ダメージを受けることも。

まずプレイヤーが操作不能になった時には敵が動かないようにした上で、例えばラストオブアスのように、敵武将が画面外にいる時は画面の左右のふちにうっすらと色がつくなどの工夫があれば非常にスムーズな戦闘ができたはずです。

このように敵を見失う要因が多すぎます。「敵を見失う→索敵→仕留める」という流れがゲームとしての面白みに繋がっているなら全く構いませんが、ただテンポが悪くなる、ただ爽快感が途切れる、ただ操作量が増える、ただ疲れる、ただ萎える、そんな悪い効果を生み出しているだけになっています。

無駄な操作を要求するUI

まずゲームを起動したらロードファイルの選択画面になります。ファイルを選択決定してロード完了した時点でロード画面から抜け出すために「戻る」を押さなければ先に進まないようになっており、こういうところにずさん、手抜き、そういった部分を強く感じてしまいます。

また、プレイ中に道具を使う際、十字キーの横を押して道具選択、十字キー下で使用なのですが、選択する前になぜか一回横を押さなければいけません。なんなんでしょう、この謎の一回横押しは?

道具は常に画面に表示されているため、普通に見ればそのまま下を押せば使用でき、一回横を押せば隣に並んでいる道具にシフトして下で使用できるような雰囲気ですが、謎の一回横押しがあるせいで一つ手前の道具を使ってしまうこともしばしば。

また、ステージクリアした後の獲得アイテム確認画面のところでも、ボタンを押しまくらないといけません。ボタンを押すたびに「ジャキッジャキッジャキッジャキッジャキッジャキッジャキッジャキッ!!!!!」と凄い音がして不快です。

また、流浪演武のスタートメニューから装備を確認できないなど、とにかく操作性に軽快さがまったくありません

UIは直感的にスマートに操作できるように設計するものです。特に忙しいプレイ中のものは余計な操作なく素早く目的の結果を導き出せるようにしますが、この戦国無双4ではそんなこと全く考えていないかのような設計になっています。

神速攻撃という素晴らしいアクションを作り出せる人材がいる一方で、UIに関しては専門の設計者がいないのでしょうか?

殆ど機能していないオンラインモード

オンラインモードで他人とプレイできると聞けば当然「好きなステージを選んで遊べる」と思いますが、この戦国無双4のオンラインは非常に雑で使いにくさ満点な上、本当に機能しているのかどうか怪しいとすら思えるほどなかなかマッチングしません。

『クイック参加→人居ない→ホストに自動切換え、募集→誰も来ない→諦める』といういつもの流れの画面
戦国無双4

無双演武、模擬演武ではステージを決めてから通信開始してそのステージで募集しているプレイヤーがいればマッチングする、というシステムになっています。

そのため、他のステージで遊ぼうと思うと、一旦そのステージから抜けて新たに他のステージに入りなおしてまた通信開始、という手順を踏まなければいけません。

同じ時間(数十秒の間)に同じステージで通信プレイをしようと思っている人がいない限り、オンラインで一緒にプレイすることはできないというとんでも仕様になっています。

こういった雑な仕様から、無双演武と模擬演武ではオンラインプレイはまずできないと思った方が現実的です。

流浪演武ではクイック(どこのステージでも募集していれば参加する)すれば、繋がることがあります。ありますが、流浪演武のステージはコンパクトですから、すぐ終わってしまいます。場合によっては相手の姿を見ることなく終わることもあります。

そしてなぜか同じ人とばかり当たります。ゴールデンタイムに2、3人しかやってないということになるんですが……。

『ルーム選択→人居ない→諦める』といういつもの流れの画面
戦国無双4

発売当初からこの状況です。ですから、本当に通信プレイがまともにできる設備をきちんと整えているのかと勘繰りたくなるほど酷い状態です。

馬に個性が足りない

馬によって、敵の攻撃を受けても落馬しない、敵を撥ね退けられる、足が速いなど、それぞれ個性があるのが面白いのが無双でしたが、この作品ではこれといって大きな個性、性能の違いがありません。

どの馬に乗っても落馬することが殆どなく、敵を撥ね退けて移動できます。

そのため、『足の速さ』だけで馬を選ぶようになってしまっています。

非常に面白みに掛けている部分です。また、馬以外の動物がいないのも何だか物足りなく寂しい気がします。

通常のセリフに不自然な残響処理

通常のセリフに残響処理がなされていますが、ぱっと聞き非常に不自然な印象、画に見えている状況にそぐわない印象を受けます。テレビに内臓のスピーカーから出ている音でもそれを感じてしまうほどです。

この音の残響処理は概ね空間を演出するものですが、屋外や日本家屋ではこういった音の響き方はしませんし、演出としてみても何を狙ってこんなにゴワゴワモワモワさせたのか全く分かりません。まるでエフェクターを買ったばかりの素人が嬉しさのあまりむやみに掛けまくったかのような音になっています。

技の名前を叫ぶように強調する効果を狙う場面以外では、セリフは常にしっかり聞こえているもの、という位置づけで良いと思います。

ナレーションの残響音については特定の音の高さが持続しているのが目立ってしまっていて、まるでロボットの声のように非常に汚らしい音の処理になっています。

つまりこの場合でいうと、何もしない方が音として、ゲームとしてのクオリティは高かったということです。

おそらく吸音重視した録音ブースで声録りしているのだと思いますが、この作品だったら部屋の響きを利用した録音の方が合っていて且つ後々手間が省けたのではないかと思います。

衣装がない

三国無双やOROCHIの印象から、ゲームが進むにつれてキャラクターたちの衣装が解放されていくものと思っているとそうではありません。

衣装はデフォルトの一着だけです。

非常に物足りない点です。その後、 PS Store にて昔の無双で使用されていた衣装が無料でダウンロードできるように数人分ずつ小出しにされていますが、キャラクターの見栄えがゲームを長く楽しめるかどうかにも関わってくる大切な要素になっているゲームだけに、変えられる衣装がないというのはマイナスな印象を受けます。

最後に・・・

細かい不満は多々あります。しかし、これだけ長年に渡ってシリーズ化されていてやることも決まっているゲームに粗がこれだけあるというのはおかしなことです。つまりは、そういうスタンスで作っているということです。

一度ぐらい、70点で抑えてあえてより完璧なものは作らない商法ではない無双を遊んでみたいものです。


戦国無双4公式サイト

PS Vita 戦国無双4 (通常版)
戦国無双4  (通常版)
PS3 戦国無双4 (通常版)
戦国無双4 (通常版)