ウィザードリィ エンパイアⅢ ~覇王の系譜~(PSP版)のレビュー

2013年11月6日 カテゴリ: ゲーム, レビュー
PSP版 ウィザードリィ エンパイアⅢ ~覇王の系譜~ (WIZARDRY EMPIRE Ⅲ ~Ancestry of the Emperor~)

総評

ダンジョン探索型RPGの代表といえるゲーム。冒険の舞台は全て3D視点のダンジョンで、その中を探索しながらストーリーを進めていきます。

このゲームの面白みの根幹は、ダンジョンを探索してマップを埋めていくことと、そこで得られるアイテムを収集することで、ストーリーはあるものの、結構どうでもよくなってしまうような埋め&収集のやり込みゲーです。

グラフィック的に非常に簡素な作りのゲームという印象を受けますが、キャラクターの種類、商店の仕組み、属性、呪文の仕組み等、ゲームを組み立てている様々な仕組み同士が上手く絡み合って面白みに繋がっているため、ゲームの進め方が掴めてくるほどに夢中になっていきます。

ただ、そのゲームの進め方、遊び方がつかめないまま兎に角ダンジョンを進んで行こうとすると、バランス的に難しいゲームになってしまいなかなか進めず、町とダンジョンを行ったりきたりするだけという行為が強調されて単調で面倒臭くてつまらなく感じてしまい物凄い勢いで飽きます。

昨今のゲームのように序盤を手取り足取り誘導してくれるなんてことは一切ないので、ゲームの仕様が分かると面白い、分からないとつまらない、というように両極端になりやすいゲームです。

PSP版 ウィザードリィ エンパイアⅢ ~覇王の系譜~ (WIZARDRY EMPIRE Ⅲ ~Ancestry of the Emperor~)

やり込み要素としては、「ダンジョンのマップを全て埋める」、「アイテムを全て集める」、「称号を全て獲得する」、「キャラクターの育成」、「モンスター一覧を埋める」があります。また、クリア後にはおまけダンジョンも用意されているため、クリアしても楽しく遊べるようになっています。

PSP版 ウィザードリィ エンパイアⅢ ~覇王の系譜~ (WIZARDRY EMPIRE Ⅲ ~Ancestry of the Emperor~)

システムで新旧グラフィックの変更、相性システムのオン/オフ、ワープの仕様の変更がそれぞれできるところは、様々な趣向のユーザーが楽しみやすくなる良い設計です。しかも、ゲーム中に簡単に切り替えが可能なところも良い点です。

クリアしてある程度レベルが上がったところからが本番です。やり込んでいくと自然と100時間以上は経ってしまいます。

3D視点のダンジョン、やり込みが目的というように、やる事が明確なゲームなので、そういうゲームに興味を持てる人には非常に良いゲームです。

ウィザードリィ エンパイアIII ~覇王の系譜~


良い点

潔さ

「あんなこともこんなこともできちゃう?!」みたいなチープな小細工がなく、「さあどうぞやり込んでください」というストレートなゲーム設計になっており、ゲームを遊ぶ側としては分かりやすく好印象です。

商店と収集の関係

PSP版 ウィザードリィ エンパイアⅢ ~覇王の系譜~ (WIZARDRY EMPIRE Ⅲ ~Ancestry of the Emperor~)

ゲーム開始時に商店(タルボーク商店)に行ってもごく限られたアイテムしか売っていません。ウィザードリィでは、ダンジョンを探索してそこで得たアイテムをこの商店に売却すると、そのアイテムが店頭に並ぶというシステムになっています。

たくさん探索してアイテム収集して、この商店に売れば売るほどこの商店の品揃えと在庫が豊富になっていき、まるで商店を作り上げていくような楽しさを味わえます。

これは、「ゲームを遊ぶ」というより「ゲームを作る」感覚に近い、非常に面白いシステムです。

豊富なキャラクターメイキング

PSP版 ウィザードリィ エンパイアⅢ ~覇王の系譜~ (WIZARDRY EMPIRE Ⅲ ~Ancestry of the Emperor~)

10種の種族と3つの性格(善・中立・悪)の組み合わせでキャラクターを作り、そこから15種の職業につかせることができます。

職業については条件を満たせば途中で変更(転職)が可能で、転職しながら様々な呪文を覚えて強いキャラクターを育てていきます。

システム設定によるゲームモードの変更が可能

PSP版 ウィザードリィ エンパイアⅢ ~覇王の系譜~ (WIZARDRY EMPIRE Ⅲ ~Ancestry of the Emperor~)

作成できるキャラクターには様々な種族と性格があり、これらがパーティーを組む際には相性の良し悪しが存在します。相性が良いキャラクター同士でパーティーを組むと、ステータス値がプラスされ、悪いとマイナスされます。

この相性システムはゲーム設定でオンオフができるため、相性システムは無くていいというプレイヤーはオフに設定すれば、相性を気にせずに様々な種族と性格のキャラクター同士でパーティーを組むことができます。

また、グラフィックの変更も可能で、普通のカラフルな絵柄と、線だけのフレームワークが用意されています。フレームワークは、妙に頭が活性化されるような感じがして、独特の雰囲気が面白いです。

ポリゴン
PSP版 ウィザードリィ エンパイアⅢ ~覇王の系譜~ (WIZARDRY EMPIRE Ⅲ ~Ancestry of the Emperor~)

線画
PSP版 ウィザードリィ エンパイアⅢ ~覇王の系譜~ (WIZARDRY EMPIRE Ⅲ ~Ancestry of the Emperor~)

戦闘は1ターンの短期決戦が基本

ボス戦以外は、基本的に1ターンで戦闘の決着がつくバランスになっているため、探索をスピーディに進めることができます。

3ターンも4ターンもかかる場合は、まだそのダンジョンに挑むレベルに達していないか、属性や隊列や装備が間違っているか、パーティーの組み方に問題があるということになります。

敵の弱点属性を考慮した装備、最適な隊列、パーティー作り、という準備をして探索すると、よりスムーズにゲームを進められます。

ダンジョン探索とアイテム収集のやり込みがメインのゲームなので、普通のザコ敵との戦闘が短くて済むのはバランス的に良いです。

1回の戦闘より1回の探索(ダンジョンに潜って町に戻るまで)がスリリングに楽しめる

このゲームは1回の戦闘そのものよりも、「ダンジョンに潜っていつ町に引き返すか」という1回の探索の中での駆け引きを楽しめる仕様になっています。

使用回数が限られた強力な呪文を使って全力で戦えばその場の戦闘は楽に勝てますが、すぐにガス欠状態になって町に戻らなくてはいけなくなります。また、呪文をケチると大ダメージを受けて回復アイテムや回復呪文が尽きて引き返す、または死亡、ということになります。これではダンジョン探索がなかなか進みません。

どの戦闘で呪文を使って凌ぐか、呪文は使わずに直接攻撃だけでふんばるか、町に戻る呪文は終盤まで覚えられないため帰りの分の余力も残さないといけのでどこで引き返すか、というダンジョン探索におけるこの駆け引きが非常に楽しいゲームになっています。潜る度にドキドキできます。

ダンジョンでの環境音が面白い

ダンジョンの中では水滴の滴る音や何かが動く小さな物音などが時々鳴ります。これがまた良い雰囲気をかもし出していて、静かな環境でゲームをしていると、「カサカサカサ…」みたいな小さい物音が本当に自分の近くで鳴っているように聞こえてビクッとすることも…。

ただ一点、わざとらしすぎて雰囲気を損ねている女性の悲鳴だけは除く。

その他諸々

呪文のグループ分けと使用回数制限の絶妙さ、キャラクターメイキング時のランダム要素であるボーナスポイントの再振り操作が楽など。

ウィザードリィ エンパイアIII ~覇王の系譜~


悪い点

シンプルが故に乱暴

ゲームを始めると、酒場や宿屋などのアイコンが並べられているメニュー画面になります。ここから既にゲームが始まっていますが、何のチュートリアルもなく突然この画面になるため、何をしたらいいのかまったく分からなくなります。

手当たり次第にメニューをいじってみてどうにか酒場で最初からいるキャラクター6人でパーティーを組んでダンジョンへ潜りますが、これら最初に用意されているキャラクターはステータスが低く相性も悪いため、取説など一切読まずに始めてそれに気づかずにプレイしていると、序盤から苦戦しまくりでかなりハードなゲームになってしまいます。

ゲームの仕組み、進め方を把握できると円滑なダンジョン探索ができて楽しめるため、せめて初めてダンジョンに潜るところまでは、テキストだけでもいいのでチュートリアルが欲しいところです。

キャラクターレベルのバランス

ウィザードリィは他のロールプレイングゲームに比べるとかなり低いレベルでクリアまでたどり着きます。そのため、1Lv違うだけで戦闘の難易度が変わります。苦戦しているダンジョンでも、そこから2Lv上げるだけで楽になるほどです。

これだけならそういうシステムとして構わないのですが、いくらレベルを上げても敵の攻撃でくらう物はしっかりくらう、というシステムになっているところが、いまいちしっくりきません。

例えばLv20で戦っていた敵に、Lv200で戦っても一撃で全滅することもあります。

レベルを上げた分体力が上がるのでレベリングに意味はありますが、あるところから上げ甲斐が無くなってしまうため、やり込みゲーとしては勿体無い作りに感じてしまいます。

壁にぶつかる処理

壁に向かって前進すると壁にぶつかって「いてっ!」と字幕が出て約1秒ほど操作不能になります。

ウザイことこの上ない。

アナログスティックで移動すると速く動けるためこれで操作しますが、そのぶん誤操作で壁にぶつかってしまう事も多くなり、その度に「いてっ!」で1秒ほど操作不能になるのはプレイの妨害にしかなっておらず非常に煩わしいところです。

また、扉にぶつかった時は、扉がガタつく効果音が鳴って同じように一定時間操作不能になり、これもまた探索のテンポを悪くしています。

深い階層のダンジョンが無い

どれも地下3~5階程度の階層で構成されているダンジョンばかりです。一つのダンジョンが簡潔に終わり次へ進める気持ちよさは良いのですが、せめてクリア後に出現するおまけダンジョンだけでも、地下50階程度はあったら面白かったところです。

BGMがいまいち

クラシカルな雰囲気のBGMが今作の絵とよくマッチしており、曲の雰囲気の方向性は良いです。ただ、汎用性を重視したフリー素材音楽のように淡白な作りのBGMばかりなのが気になります。ウィザードリィという伝統あるタイトルを背負う一ゲーム作品ということを考えると、もう少し力を入れてもらいたかったところです。

また、メロディはそんなに悪いわけではないのですが、アレンジがあまり上手くいっていないようです。例えばメロディを邪魔する等の聴き心地の悪い音使いが出てきて、ゲームをプレイしていて非常に気持ちが悪いです。


ウィザードリィ エンパイアⅢ ~覇王の系譜~ 公式(PSP版)

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